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執筆者の写真南薩の田舎暮らし

古本屋は最適化へのアンチテーゼ

更新日:2023年12月15日

11月25日(土)、石蔵ブックカフェ開催しました。


前日までは風がピューピュー吹く寒い日でしたが、当日は、朝こそ冷え込んだものの、昼間は穏やかな好天に恵まれて、とても気持ちのよい中での開催になりました。


今月から新しく始めた企画があります。それは「○○好きが集う会」。これは、「○○好き」に石蔵に集まってもらって、「好き」を語ったり、話を聞いたり、同志を見つけてもらおう、というなんともシンプルな会です。



記念すべき1回目は、「『水曜どうでしょう』好きが集う会」でした…が、事前のお申し込みが最少催行人数の3人に満たなかったために開催は見送られました。残念!


でも、告知の際の反応は決して悪くなく、「ちょっと行きたいかな」と臭わせていた方もチラホラいました。「『水曜どうでしょう』好きが集う会」は時期を見て改めて開催したいと思います。その時はぜひ参加してくださいねー(←特定の人に呼びかけています)。


今月の特集は「開いてワクワク♪ 図鑑特集」でした。そのものズバリの図鑑は意外と少なく、見て楽しむ本やマニアックな本などいろんな本が並びました。


その中でも一番の変わり種がこちら! 稲垣足穂・中村宏『機械學宣言—地を匍う飛行機と飛行する蒸気機関車』です。



この本は、画家の中村宏と作家の稲垣足穂が、松岡正剛を交えて鼎談するというもののようですが、もはや内容よりも特筆すべきは装幀の方。銅板がカバーになっているという、聞いたこともない奇っ怪な装幀です。私は稲垣足穂は何冊か読みました。『一千一秒物語』『弥勒』『人間人形時代』など。『人間人形時代』も松岡正剛が編集を担当した作品で、内容よりもブックデザインが特徴的な本(なんと本の真ん中に穴が開いている)です。


この『機械學宣言』は、限定300部で作られており、シリアルナンバー入り。古書価格の相場は4万5000円以上だそうですが、つばめ文庫では4万円で販売中ですので、この機会をお見逃しなく!(日本の古本屋で販売しています)


今回、もう一つ珍しい本、というか雑誌がありました。『Fukuoka Style』(フクオカ・スタイル=FS)です。



『Fukuoka Style』は、福岡の印刷会社である福博綜合印刷が1990~2001年に発行していた季刊誌(全30号)です。これは、東京に負けない雑誌を福岡でも作るんだという意気込みで作られ、全く採算度外視で作られたそうです。表紙の紙も非常に上質なものが使われており、印刷会社ならではのクオリティ。


内容も、全国の高級雑誌(『太陽』とか『銀花』のような)と何ら遜色なく、地方都市でこのような雑誌が成立し得たことは奇跡と言ってよいでしょう。ちなみに最初の編集長は出村弘一さん(『デザインの現場』の編集長だった方)です。(※『太陽』の編集に関わった筒井ガンコ堂さんが編集長だったとの情報もありました。)


そしてこの雑誌、廃刊になってもう20年以上経つのですが、なんとWEBに電子書籍が全て公開されております! いやー福岡すごい。鹿児島なんか相手にならない(自虐)。


↓Fukuoka Style WEB version


ただ、WEB版はさすがに読むのが疲れるため、やはり雑誌は紙で読みたいものです。というわけで写真の号は私(南薩の田舎暮らし 窪)が買ってしまいました。つばめ文庫には別の号がまだ残っていたと思いますので、狙っている方はお早めに。


そして今回、一番注目したのはこちら!!『バスマガジン』をはじめとしたバス雑誌・ムックです。



これはすごい…! としか言いようがないマニアックな内容! 誰がこんなの買うんだろう? などと思っていたら、准スタッフの川田達也さんが「このフロントがカッコイイ。今のバスの何の面白味もないタダの四角いフロントとは比べものにならない」「この配色がすばらしい」「この車種がどーのこーの」とかいろいろ言うので、こんなに身近にバスの車体好きがいたんかい! と大笑いしました(笑)



『バスマガジン』の紙面を見ていますと、「マニアはここまで情報を集めるんだ!」と感心させられるほどです。何でも道を究めるというのは、険しいものなのですねー。


ということで、バスの話をいろいろしていたら、次回の「○○好きが集う会」のテーマは「バス」に決まりました! 思えば、鉄道オタクはたくさんいますけど、バスオタクって数が少なさそうですし、同士が集まる機会もなさそうなので、いいかもしれない。


オタクというほどでなくても、バスで移動するのが好き、バスの車体が好き、バスに思い出があるなど、バス好きの皆さん、ぜひご参加下さい。


**バス好きが集う会**

12月23日(土)17:30〜19:00@丁子屋石蔵(石蔵ブックカフェ内)

↓申し込みはこちら(3名以上の申し込みで開催決定)


ちなみに、オタクといえばこんな本もありました。『中小私鉄第三セクター 最新版列車運行図表<非電化路線編>』。「図表」って何? と思ったら、ダイアグラム!!



この本、ほぼ全ページがダイアグラムです。誰が見るんだこんな本。時刻表で十分なんじゃ…。と思ったらいけないんでしょうね。いやー、奥が深い。


古本屋は、自分で仕入れたい本が決められるものではないので、こういう変わり種みたいな本が結構入って来ます。そういう、意図せざる選書っていうのが、実は一番面白いのかもしれません。


ちなみに、普通の本屋(新刊書店)も、実は仕入れたい本を仕入れているのではなく、取次(本の”問屋”)からの自動配本によって本が並んでいるんです。これは、書店の規模や立地に応じて、取次が「こんな本が売れそうだ」という”最適化”したラインナップを自動的に納品するものです。本屋って、規模が同じくらいならどこも似たような本が並んでいますが、その理由はこのシステムにあります。


このシステムは、それなりに合理的なのですが(入荷する本をいちいち書店員が選ばなくてよいという利点が大きい)、そのためにちょっと変わった本は、小さな書店には並ばない、ということになります。最適化されてるということは、「外れ値」がないからつまらない。


というわけで、古本屋は、そういう最適化へのアンチテーゼなのかもしれません。「こんな本、誰が買うんだよ!」というような本が時々置いてあるから面白い。4万円する奇っ怪な装幀の本とか、バスの車両が延々と載っている雑誌とか。こういうことが、ある意味、豊かさかもしれませんよ!?



「南薩の田舎暮らし」のコンフィチュール(ジャム)も、そんな最適化されてない存在の一つかもしれません。だいたいジャムなんて、スーパーで200円くらいで売ってるんですからね。600円のジャムなんて最適化されていないゼータクな存在です。というわけで、みなさん思う存分ゼータクしていただければと思います(笑)


来月は、今年最後の開催です。12月23日(土)10:00〜19:00。また石蔵でお会いしましょう。


【今日の一冊】

詩:ヘンリー・スコット・ホヲンド、絵:高橋和枝『さよならのあとで』

島田裕巳『日本の10大新宗教』



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