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執筆者の写真南薩の田舎暮らし

無名人物が残した作品

9月23日(土)、石蔵ブックカフェ開催しました。


直前まで私たちスタッフも認識していなかったのですが、当日は秋分の日で祝日でした。隣の松岡医院も万世薬局もお休み、丁子屋さんもイベント時のみの営業で、石蔵ブックカフェだけのぽつんとした営業です。外は強い日差しでしたが、風はもう秋の感じがしました。



今回の特集は「詩・短歌・俳句の世界」でした。このジャンル、つばめ文庫小村さんによれば「普段全然売れないジャンル」とのことですが、「いかにも古本屋」という感じの雰囲気がします。



しかし、歴史資料として捉えてみると、やや潤色は多いとはいえ、生活者の目で捉えたその時の世界が残されている…という気もしますから、しっかり後世に残すべき本ではないでしょうか。特に興味深いと思うのが、マイナーな地名が冠された歌集。上の写真にある東郷良子『歌集 小山田の影』なんか気になりませんか?


だって、普通「小山田」(鹿児島市の北東側の端っこにある地域)が本のタイトルになるってありえないことですからね。小山田がどう扱われているのか!? 気になる方は少ないと思いますが(笑)、たぶんまだつばめ文庫で売っていますので現物をお確かめください。



写真を撮り忘れてしまいましたが、「今日の一冊」に選んだ鮫島耕明『立祷の詩(りっとうのうた)』という本も、歴史資料として面白い本でした。著者は明治末年頃に加世田小湊に生まれ、彫刻家を志すも戦争で帰郷し万世町役場に奉職。その後万世町と加世田町の合併により加世田市職員となり、役場の仕事の傍らで日本画を描いていた方です。この本は自伝で、昔の加世田・万世の様子が時々描かれるのがとても興味深いなと思いました。


フランスでは20世紀前半に「アナール派」という歴史学の一派が勃興するのですが、それは事件や政治だけではなくて、人々の日常の暮らしまで射程に含めた総合歴史学でした。日本ではアナール派の歴史学は未だ十分に取り入れられているとは言えませんが(宮本常一くらいでしょうか?)、いずれアナール派の歴史学によって近現代史が語られる際は、地元の無名人物による歌集・句集・詩集・エッセイ・自伝などが重宝されることになるでしょう。



ところで、准スタッフ川田達也さんによる「道の器」のコーナーが充実中です。改めて説明すると、「道の駅で見つけた自分で使いたい器」です。これも一つの無名人物の作品ですね。一級品じゃないのでこれ自体が歴史に残ることはないですが、こういうもの(道の駅で売っている陶器)があったということは、後世の歴史に残ってらいたいものです。


それにしても急須に野の花を挿しているのが面白いですね。結構いい陶器が並んでいるので、ぜひ手に取ってご覧ください。



次は、つばめ文庫からの告知です。10月9日(月・祝)に出水の「すみとカフェ」で読書会を行うそうです。「課題のとある本」について語るということですが、「とある本」がチラシでは明らかではありません。つばめ文庫Instagramからチェックしてみてください。



次は、大浦町の「books & cafe そらまど」で行う「そらまどアカデミア」の情報(さっきのもですが、写真が見づらくてすみません)。10月8日(日)、頴娃の「ギャラリー蛇足」の漣 俊介さんによる「仮面による文化形成」と題した講演が開催されます。詳しくはこちらからどうぞ。


第8回そらまどアカデミア「仮面にみる文化形成」を開催します



さて、次回10月28日で、石蔵ブックカフェは6周年を迎えます。6年間、月一回、欠かさず続けてきました。誰がこんなに長続きするイベントになると想像していたでしょうか。「別に儲かってもいないのに(!)、よく続けているな」と常連さんからも感心されています。


そして来月には、石蔵ブックカフェ6周年を記念して、周年祭恒例の「石蔵ブックカフェ通信」を配布いたします。これは、スタッフによるミニエッセイ集です。今回のテーマは「思い切って買った本」。どんな本が登場するのか、そしてなぜ思い切って買ったのか、ご注目ください。


また、「6周年を区切りにして、何か新しくやりたいねー」という話もスタッフでしています。というのは、最近夕方5時から7時の間の時間に、ほとんどお客様がいらっしゃいません。営業時間を短くするのは簡単ですが、せっかくだからこの時間を利用して何かしてみようか? と考えているんです。なにしろ6年間も続いていますので、しぶといですよ!


それでは、次回は10月28日(土)10:00〜19:00。また石蔵でお会いしましょう。


【今日の一冊】

柳 佐知『あさひと生きる—子宮頸がん手術を乗り越えて天使のママになったわたし』

鮫島耕明『立祷の詩』


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